アレキサンダーファン
2010年07月掲載
プロフィール
水無瀬一成(みなせ・かずなり) 水無瀬一成
(みなせ・かずなり)

京都市出身。2003年、京都市立芸術大学音楽学部卒業。同年、(財)名古屋フィルハーモニー交響楽団入団。現在、同楽団首席ホルン奏者。これまでにホルンを小山亮、猶井正幸の各氏に師事。ジャパンブラスコレクションメンバー。
使用楽器:アレキサンダー103、アレキサンダー303
使用マウスピース:ティルツ・マックウィリアムNo.1(303を使うときはNo.2)

第33回 プレーヤーズ
水無瀬一成 インタビュー

国内外のホルンプレーヤーにスポットを当て、インタビューや対談を掲載するコーナー。
ホルンについてはもちろん、趣味や休日の過ごし方など、
普段知ることの無いプレーヤーの私生活についてもお伝えします。


─ホルンを始めたのは?

 中学校の吹奏楽部に入って始めました。まあよくあるパターンなんですけれど、本当はトランペットがやりたくて。その願いかなわずホルンになったんですけれど、しばらくは「なんかつまらん楽器やなあ」と思っていました。何年かそう思っていましたね(笑)。マーチを演奏することが多かったので、後打ちばかりですからね。高校に行ってもずっと「他の楽器に変わりたいな」と思い続けていました。
 でも、高校3年生のときに、同級生のトランペットが辞めてしまって、最後の吹奏楽コンクールだけはトランペットで出ました。それもピッコロトランペットでね。今になって思えば、よくあんなことしたなと(笑)。


水無瀬一成

─でも、その年に音大受験なんですよね?
 実は、中学から大学まで一貫の学校で、高校を卒業したらそのままそこの大学に行くつもりでいたんです。でも、高校3年生の3学期頃、何を思ったのか(笑)「楽器をちゃんとやってみたいな」と。それで内定していた大学への進学を取りやめて、その年は受験をしないで、1年間準備して京都市芸術大学に行きました。


─しかし、その時期になってなぜまた急に?

 もともと、楽器は何らかの形で続けていこうとは思っていたんです。でも高校の定期演奏会に音大生の人たちが手伝ってくれたのを見て「自分もがんばって音楽を勉強してみようかな」と思いましたね。


─大学時代は、練習した方ですか。

 変な負けず嫌いみたいな意識があって、他の人より早く来て、他の人よりも遅く帰ろうと思っていました。本当に練習の中身が濃かったかどうかはわかりませんが、他の人が先に来て練習しているとすごく不安になっていたんです。


─言葉にするのは難しいと思いますが、どんな吹き方をしたいと思っていましたか。

 最初思っていたのとオーケストラに入って変わって来た部分もありますが、やはり格好よさ、勇壮さは出したいですね。もちろん繊細さも必要ですが、それを生かすためにも、堂々とした部分は必要だと思っています。


水無瀬一成



「ミスがない=良い演奏家」とは限らない

─名古屋フィルハーモニー交響楽団に入ったのは?

 2003年のことでした。オーディションは卒業した年の5月頃で、入団は同じ年の12月です。


─オーケストラに入りたいという気持ちは、ずっとあったのですか。

 大学に入ってからは、それだけですね。もともとソロピースを吹くよりはオケの中で吹く方が好きでしたし、何が何でもオケに入りたいなという気持ちはありました。


─大学を卒業してすぐにオケに入ったということで、入ってから学ぶこともあったのではないですか。

 それどころか、最初は何もわからなくて、入ってから勉強したことばかりです。もう7年になるので同じシンフォニーを何度かやったこともありますけれど、後から考えると周りが何も聴けてなかったなと気付くことも多いですよ。同じ曲をやるごとに、聞こえてくる声部が変わってきて、それで怖くなってしまう部分もあります。入ったばかりのときは怖さ知らずだったなあと、今になって思いますね。
 他の動きがわかった上で、多少ずれていても音楽の運びがよければOKという演奏ができれば一番良いのですが、なかなかそうはいかない。合わない、怖いということだらけですよ。「知ってしまうと怖い」ということだと思います。


水無瀬一成

─オーケストラで吹く上で大切なことはどんなことだと思われますか。

 お客さんは大半の人が、CDを聴くように演奏会を聴けたらと思っているのかもしれませんが、CDのように傷のない演奏ということにこだわりすぎるのも違うと思います。
 ミスがないというのは上手な演奏の大きな条件のひとつではあるけれども、「ミスがない=良い演奏家」とは限らない。多少傷があっても感動する演奏というのはたくさんありますから、そういうところを目指したいですね。もちろんミスはしないに越したことはありませんが。はい(笑)。


─水無瀬さんの目から見て、名古屋フィルというのはどういうオーケストラですか。

 今、世代交代が進んでいるところです。入った当初はのんびりとした雰囲気でしたが、最近は若い人も入って、より「プロらしく」なったとでも言いましょうか。やはり腕の良い若い人が入ってくると、良い刺激になりますね。「何であんなのがすぐ吹けるのかな」と思うことも多いです。


─今、名古屋フィルではどんなポジションを吹かれているのですが。

 いちおう肩書きは「首席」ですが、1番だけしか吹かないということはなく、3番も吹きますし、1アシも吹いたことがあります。主に1番を吹くというポジションですね。


─やはり1番というポジションは特別ですか。

 確かに目立つソロなどもありますが、1番は飛び込んでしまえば良いという面もありますから、慣れてしまえば3番を吹くより楽な部分もあるかもしれません。楽と言ってしまうと語弊がありますが(笑)。


水無瀬一成

─オーケストラ以外では、ホルンカルテットのシンフォニア・ホルニステンで活動されていますが、メンバーが全国に散らばっていて、練習は大変じゃないですか。
 それでも年2回くらいはそろいますから、その間隔が逆に良いのかなと。年中顔を合わせていると嫌になるかもしれませんし(笑)。良い意味で息抜きになっていると思います。全員がアレキサンダーによるサウンドもきっちり合うし、気分的にリフレッシュできます。


─活動もユニークですよね。

 「普段、生の演奏を聴く機会が少ないような場所に行く」というのがコンセプトですから。生の演奏を聴いてもらえたら、「ホルンてこんなに吹いてもいいのか」とか「ここまでの音が出るんだ」ということをわかってもらえると思うんですよね。そうすれば「ホルンをやりたい」と思う人も増えるかもしれないですからね。


─あと、現在の活動としては?

 大学時代からのメンバーで、金管5重奏をしています。名前は「きょうと金管5重奏」で、年に1回は演奏会をしようということで活動しています。今年は7月1日に京都文化博物館で演奏会を行ないました。


─レッスンもされていると思いますが、生徒さんによく言うのはどんなことですか。

 まず息圧です。アンブシュアを注意して欲しそうな人もいますが、実はそれほど直す必要がなくて、音を吹く上で必要な息の圧が足りてないせいで口に負担をかけているという人が多いんです。リップスラーとかでも息の圧でしっかり作っていかないと、口に負担がかかってしまいます。


─水無瀬さん自身、休みの日でも、楽器は吹いている方ですか。

 吹かないと不安になるので、移動などで無理なとき以外は毎日吹いています。やることはリップスラーとロングトーンと音階くらいです。でも、時間のあるときは休憩しながら一日中吹いていることもあります。割と練習が好きなんだと思います(笑)。




イメージを持っていれば、すぐそれに応えてくれる楽器

─さて、現在お使いの楽器は103MBLとのことですが。

 今の楽器は2008年の秋くらいに購入したものです。高校を卒業する頃から、ずっとアレキサンダー103しか使っていないですね。その中で、いろいろ試したことはありますが。
 この前に使っていたのは銀メッキの103、その前がまたイエローブラスと、一時期1年に1本ずつ買っていたような時期もありました。でも、こんなことをしていてはいかんと思ってね(笑)。


─そうやっていろいろな楽器を使ってみたのは?

 やはり、常に新しい楽器に目が行ってしまうということはあります。だから新しいハンドハンマー仕上げにも興味があるのですが、なにしろ今の楽器を買ったばかりですからね(笑)。


水無瀬一成

─それにしてもアレキサンダー、それも103ばかりなんですね。

 最初は、まだアレキサンダーが良いのかどうかなんてわかっていませんでした。4番ロータリーが上下逆になっているのが恰好良かったし、単にブランド志向というか「アレキサンダーというのは高級で良いらしいぞ」というくらいで、親に中古を買ってもらって。でも吹いてみたらやっぱり良いなあと思って、それからずっとですね。


─103の良さというのはどういうところだと思いますか。

 いろいろな音色の出し入れがしやすいということろでしょうか。パリッという音も行けるし、柔らかくも行けるし、表現の陰影が出やすいという感じだと思います。
 もちろん他には鳴りむらがなくすべての音域が吹ける楽器もあって、それは楽器としての完成度は高いのかもしれませんが、吹いてみたらどうも金太郎飴みたいでつまらんと思って。「やっぱりアレキサンダーが良いな」と、そのとき改めて思いました。


─でも、金太郎飴でないということは、吹きこなすのにコツがいるということはありませんか。

 そうですね。吹きたい音のイメージがないと難しいかもしれません。逆にイメージを持っていれば、すぐそれに応えてくれるように思います。


─ところで、銀メッキの103などを経て、結局イエローブラスのラッカー仕上げに落ち着いたというのは?

 やはり音が明るいし、反応が良くて吹きやすいと思います。これがノーラッカーだと、手入れが大変なので…。シルバーも、録音のりが良かったし、特に木管の人に受けが良かったですね。


─トリプルの303もお使いとのことですが。

 オーケストラでたまに使いますね。例えば、去年やったベートーヴェン・チクルスで、一晩で6番と8番を吹くことがあったのですが、そういうときはトリプルだとより安心できますので。でも、普段はほぼ103です。たまにトリプルを使うと、指を間違ってしまうこともあってね(笑)。103に比べると楽器も重いですし、パリッといってくれるまでにちょっと時間がかかる印象ですね。個体差かもしれませんが。


─最後に、将来の音楽活動で何か考えていることはありますか。

 とにかく、ずっとプレーヤーでありたいと思っています。


水無瀬一成


一問一答コーナー

─音楽以外の趣味は?

 こう見えても、身体を動かすことが好きで、ゴルフと野球はよくやっています。野球は名フィルの団員でチームを作っています。オケには野球好きが多いので、日本中のオケでリーグ戦をしたら楽しそうですね。見るのももちろん好きです。阪神ファンですので、隙あらば甲子園に行ってしまいます。あと、自分で素振りをしたり、バッティングセンターに行くことも多いです。


─ゴルフはいつごろから?

 オケに入ってからです。団員の方から道具一式をもらって、何もわからずついて行きました。昔は、「止まってる球を打つのなんて簡単だ」と思っていたのですが、それが難しいんですね。普段練習しないのがいけないんですけれど。


─スポーツ以外では?

 料理が好きですね。作ること自体がストレス発散になっています。でもちょっと作りすぎてしまうことが多くて、それが積み重なると……。オケに入ってから20kg弱太ってしまって。気を付けないといけませんね。


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