アレキサンダーファン
2014年8月掲載
第59回 アレキファン的「ホルンの“ホ”」
ベルリン・フィルハーモニック・ホルンカルテット来日!


 2014年5月から6月にかけて、ベルリン・フィルのホルンセクションの、シュテファン・ドール、ファーガス・マックウィリアム、クラウス・ヴァレンドルフ、サラ・ウィリスの4人によるベルリン・フィルハーモニック・ホルンカルテットが来日し、ぴったりと息の合った素晴らしいアンサンブルと、アレキサンダー103による美しい響きを披露した。


ホルンの歴史と世界一周を、超一流の演奏で体感


ナビゲーターのジョナサン・ハミルがサプライズで演奏も
ナビゲーターのジョナサン・ハミルがサプライズで演奏も!
 まずは5月30日に東京オペラシティで行われたカルテットの演奏会についてレポートしたい。この公演はSony Music Foundation(ソニー音楽財団)の30周年を記念して行なわれたもので「10代のためのプレミアムコンサート2」とのタイトル通り、青少年とその保護者を対象とした演奏会。オーケストラだけではなく多方面にて活躍するジョナサン・ハミル(東京交響楽団首席ホルン奏者)をナビゲーターに迎えて行われたこの演奏会、一部は「つの笛からホルンへ」と題し、カルテットがホルンの歴史を面白く楽しく、とてもわかりやすく説明。ジョナサン・ハミルの軽妙洒脱なトーク、進行と相俟って客席からは笑い声が絶えない時間となった。


つの笛からホルンへ、ホルンの歴史を楽しく紹介   つの笛からホルンへ、ホルンの歴史を楽しく紹介
つの笛からホルンへ、ホルンの歴史を楽しく紹介


サラ・ウィリスがステージ上から客席を撮影!それに応える観客がすごい!!
サラ・ウィリスがステージ上から客席を撮影!それに応える観客がすごい!!
  二部では「世界一周」と題し、様々な国の音楽を演奏。もちろん、CD『Four Corners』収録の《ずいずいずっころばし》も日本代表としてエントリー。一部も二部も超一流の演奏に超満員の聴衆は魅了されっぱなしの2時間であった。10代の青少年にとっても世界レベルの音楽を体感し、またメンバーのエンターテイナーぶりも堪能と、かつてないほどに魅力的な夜になったのは間違いない。


ロビーでの楽器体験コーナー、多くの来場者で賑わった!
ロビーでの楽器体験コーナー、多くの来場者で賑わった!
 なお、この日は演奏会協賛企業の(株)ヤマハミュージックジャパンによるアレキサンダーホルン、ヤマハホルンの楽器体験コーナーがロビーに設置された。開演前、休憩中には大変多くの来場者が体験コーナーに詰めかけ、憧れのアレキサンダー、定番のヤマハの音を楽しむ光景が見られた。


終演後のサイン会は1時間程続いた!
終演後のサイン会は1時間程続いた!

「一度ホルンを吹いてみたかった」「今、部活でホルンを吹いているけれど、こんなにたくさんのホルンが並んでいてすごい!カッコいい!!」「いつか息子にもホルンをやらせたい」などと言った声も数多く聞かれ、来場者にとっては超一流の演奏に加え、自らも楽器を体験することで更にホルンに対する熱が高まった一夜になったのではないだろうか。

ソニー音楽財団30周年記念「「10代のためのプレミアムコンサート2」」
写真提供:公益財団法人ソニー音楽財団


東京都交響楽団と《コンツェルトシュトゥック》を演奏


東京都交響楽団

 さて今回の一番のトピックは、6月1日(日)にサントリーホールにてマルク・アルブレヒトの指揮で東京都交響楽団と共演し、シューマンの《4本のホルンと管弦楽のためのコンツェルトシュトゥック》を演奏したこと。ちなみに、都響のホルンセクションも全員がアレキサンダーを使用していることで知られている。
 軽快なテンポで明快なアタックと強弱のメリハリを持ったモーツァルト《フィガロの結婚》序曲に続いて、ベルリン・フィルの4人が登場。サラが纏う落ち着いたワインレッドのドレスが目を引く。4人全員がコンマスと握手を交わし、ソロの位置に着いた。ポジションは上からドール/ヴァレンドルフ/マックウィリアム/サラ(すみません、今回も彼女だけファーストネームで表記します)。
 バレンボイム指揮ベルリン・フィルによる《コンツェルトシュトゥック》の名盤DVDでもドールはヤマハのトリプル(このときはプロトタイプ)を使用しているが、今回もドールが吹いたのはヤマハのトリプルホルン、YHR-891。他の3人はいつものアレキサンダー103であるが、耳を凝らしてみても4人のハーモニーに違和感は全く感じなかった(当然と言えば当然だが)。



東京都交響楽団

 4人の演奏は、冒頭のファンファーレから決して大げさにならない。軽く吹いているように感じる音色なのだが、オーケストラからセクションとしてすっと浮き出して来る。と同時に、ちゃんとオーケストラのサウンドとも溶け合っていて、ベルリン・フィルの4人がやはりオーケストラのホルン吹きなのだと改めて感じた。
 そしてサラの低音の安定性はこの曲でも際立っていた。4番から短いフレーズで1番までつないでいくような部分が何回も出て来るが、多くの場合は特に低い方がもこもこした感じになりがちだ。しかし彼らはすべてのフレーズがきちんと聴こえて来るのだ! また、4人でハーモニーを作るときに1番だけが飛び出ないで低音〜中声部をとても密度の高い音で吹いているため、和音が厚くしっかりと響くだけでなく、和声の移り変わりも明確にわかるのが面白かった。
 楽譜通りに吹くと1番の負担が大きすぎることもあり、第1楽章の途中や第2楽章の最初と最後など1、2番の掛け合いを3、4番に振り分けている部分もあったが、吹く人による歌い方の違いを感じることもできて、ファンにとってはむしろ嬉しいところだった。
 指揮者のアルブレヒトによる音楽も、ソロだけでなくオーケストラの細部まで際立たせるような傾向で、しかもノリ良く軽快に曲が進んでいく。そこにベルリン・フィルの4人のサウンドが加わり、「この曲はどうしてこんなに短いんだろう」と思うほど、幸福な時間はあっという間に過ぎて行った。



 曲が終わると、まるでこの日のメインであるかのような拍手喝采で、何度もステージに呼び出される。ベルリン・フィルの4人によるアンコールはまず、あの有名なテーマで始まってジャズ風に展開して行くドン・ハグダッド編曲の《ティル・オイレンシュピーゲル・ブルース》。続いては彼らのアンコールピースとしてはもはや「定番」と言ってもいい、ヴァレンドルフが東京の地下鉄の駅名をラップ風に次々繰り出す《地下鉄ポルカ》。この曲を聴いたことがないであろうサントリーホールの聴衆やオーケストラのメンバーにも大受けだった。
 この日《コンツェルトシュトゥック》目当ての聴衆が多かったことは、ホルンを背負った人がたくさん来場していたことからも明らか。ここでこれだけ盛り上がってしまって、正直「メイン曲はやりづらいのでは?」と思っていたのだが、全くの杞憂にすぎなかった。シェーンベルク編曲によるブラームスのピアノ四重奏曲第1番(管弦楽版)を、アルブレヒト&都響は色彩豊かに(ときには極彩色と言ってもいいほどの)演奏。ロマンティックな曲調ながらそれに溺れすぎず、シェーンベルクの編曲による近代的な面も見せながら、理知的かつ熱い演奏で魅了して、《コンツェルトシュトゥック》を上回る喝采を浴びていたのはさすがだった。

東京都交響楽団プロムナードコンサートNo.358
写真提供:東京都交響楽団 ©堀田力丸


文=アレキサンダーファン編集部:今泉晃一


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