アレキサンダーファン
2006年07月掲載
プロフィール
池田重一(いけだ しげかず) 池田重一
(いけだ しげかず)
1987年大阪音楽大学音楽学部卒業。YAMAHA新人演奏会に出演。88年旧西ドイツアーヘン国立音楽大学入学。90年同大学を最優秀で卒業。帰国後、大阪フィルハーモニー交響楽団に入団。90年、95年、97年にソロリサイタルを開催。ホルンを近藤望、デイビット・ブライアント、リカルド・アルメイダの各氏に師事。現在、大阪フィルハーモニー交響楽団首席ホルン奏者、アーヘナー・ホルンカルテット、宮川彬良とアンサンブル・ベガのメンバー。大阪音楽大学、神戸女学院非常勤講師。
第21回 プレーヤーズ
池田重一インタビュー

国内外のホルンプレーヤーにスポットを当て、インタビューや対談を掲載するコーナー。
ホルンについてはもちろん、趣味や休日の過ごし方など、
普段知ることの無いプレーヤーの私生活についてもお伝えします。

─大阪音大を卒業されたあと、ドイツのアーヘン国立音楽大学で勉強されているんですね。
もともと教師をやるつもりで日本で音大に入りましたが、当時あまりにも採用試験が狭き門だったので……。師匠に相談してみたら、「ぶらぶらしていないで、ドイツにでも行って勉強して来い」と言われて。
向こうでデイビッド(ブライアント)に出会ってアーヘンに行くことになりました。
彼に付いて、演奏会などに行ったりしているうちに「こうやってプロになるのか」というのが見えてきて、「この道へ行こうか」と。
実は私の後、大阪音大からアーヘン国立音大に行ったホルン吹きが結構いまして、彼らとはその名も《アーヘナー・ホルンカルテット》というカルテットを組んでいます。


─向こうでのレッスンで日本と違う点はありましたか。
池田重一(いけだ しげかず)
まず自分から何かをやらないと進まない、ということでしょうか。
最初に一番戸惑ったのは、先生の前で曲を吹いても、何も言ってくれないんです。「グート(よろしい)」とか言っておしまい。
「これはどうしたものか」と考えて、次からは質問を考えていくことにしました。「私はこう吹きたいのだけれど、先生はどう思いますか」と。そうしたら初めて「それはそれで良いけれど、僕だったらこうやるよ」とやっとレッスンが成り立ちました。
それで納得しましたね。こちらからアプローチをしないと何も返って来ないのだ、と。もちろん先生にもよるんでしょうけれどね。


─そもそもホルンを吹き始めたきっかけというのは?
中学校のときにたまたま吹奏楽部に入りまして、そこでハマッたんですね。「たまたま」と言うのは、当時行っていたそろばん塾の先輩に「お前ブラバンに来いへんか?」と誘われて、入ることにしたんです。
当時どんな楽器があるかさえ知りませんでしたから、先生にこれをやりなさいと渡されたのがホルンでした。まあ最初はメロフォンでしたが。


─いつごろから音大に行こうと思われました?
高校3年生の夏休みくらいですね。お袋にそう言ったら「何言うてんねん」と言われましたが(笑)。
音大に行った一番の理由というのは、教師になって吹奏楽の顧問となって、「自分のバンド」を持ちたいという夢があったからです。


─今使われているニッケルシルバーの103は珍しいですね。
確か94年でしたが、たまたまニッケルシルバーの楽器を注文したらそれが良かったんです。
ニッケルにした理由は、単に銀色に光っている楽器が欲しいということが一番ですが、当時、私の音は明るいと言われていたので、少し重い音を出したいなということもありました。
こんな体格ですから、太い音がなかなか出せなかったんです。いまだに体重43kgですから。


─実際に吹いてみて、どんなところが良かったですか。
池田重一(いけだ しげかず)
変な言い方をしますと、「関西弁で吹ける」と言うんでしょうか(笑)、ちょっと訛りたいときに良いんです。
実は同じ仕様のものを2本持っていて、今日持ってきているのは古い方ですが、こちらには普段、大学生のときに初めて買った103のゴールドブラスのベルを付けています。そのベルでないと自分がイメージする音が出ないんです。
ベルまでニッケルにしてしまうと、「重い、暗い」が優先されてしまうような気がします。
それでこういう組み合わせになりました。


─新しい方というのは最近ですか。
去年注文したものですが、同じようにニッケルシルバーで、ベルはゴールドブラスにしてグラム数まで指定して作ってもらいました。ずっと使っていた楽器と同じもので、新しいのが欲しかったのですが、やはり音は違いますね。
ただ、3年くらい吹き込んであげると音も変わってくると思いますので、古い方をメインに使いながら、新しい方を徐々に慣らしてあげるという使い方ですね。
他には107も17年くらい使っています。


─アレキサンダーを使っていて、どんなところに魅力を感じていますか。
倍音が多くて豊かな響きがするということでしょうか。
あと、自分が調子悪いときに、楽器が助けてくれるんです。
私の場合は体が細いので、オーケストラの中に入ったときに、少ない息で音を遠くに飛ばすことが課題ですが、103は例えば疲れたりして息の量が落ちてきても楽器が響いてくれるポイントがあるんです。逆にそういう楽器が響くポイントを探してあげると、息はだいぶ楽になります。


─池田さんが現在活動されているアーヘナー・ホルンカルテットや大阪フィルハーモニー交響楽団(大フィル)のホルンセクションでは他の方はどんな楽器を使われていますか。
アーヘナーの方は全員103です。大フィルはバラバラですね。
ただ、楽器以前に奏者自身が個性豊かですから(笑)。


─演奏する上で好きな作曲家とかありますか。
私はビブラートをかけるものですから、ロシアものとかフランスものが良いですね。歌える曲が好きです。
逆にやたらとハイトーンとかテクニックが要求されるものは苦手ですね。そういう曲が出てくると「村上さん(もう1人の大フィルの首席ホルン奏者)お願い」って(笑)。


─ところで、ビブラートというのはいつ開眼されたのですか。
気がついたらかけてましたから、中学、高校の頃からでしょうか。
でも大学ではだいぶ「ビブラートをかけるな」と言われましたし、ドイツでも言われました。大フィルでも入った当初、何人かから言われましたね。今はもう堂々とやってますが(笑)。
もちろん曲によって使い分けています。


─ビブラートはどういうふうにかけていますか。
口でかけています。お腹はしっかりと息を支えるだけです。


─音楽活動の中で、これからの希望のようなものがありますか。
池田重一(いけだ しげかず)
オーケストラで吹いていても「この曲を池田が吹くなら聴きに行こう」と思われるようなプレーヤーになりたいですね。
それから、私はずっと吹奏楽をやってきて今オーケストラをやっているわけですが、日本の楽器演奏者は吹奏楽とオーケストラに真っ二つに分かれてしまっているんですね。これをなんとか融合できないかなと思ってます。
吹奏楽では子供たちに教えに行く機会も多いのですが、少しでも音楽を好きでいてくれる人を増やすのが私の使命だと思っています。




一問一答コーナー

─ホルン以外の趣味は何ですか。
オートバイです。大学時代からずっと乗っています。
今も演奏旅行などで乗って行くことがありますよ。下に座布団を敷いて楽器を後ろにくくり付けて。
遠いところだと、九州とか札幌も行きましたね。仕事前は船ですが、帰りはバイクに乗って走ってきました。札幌から1500km近くを、3日かけて帰ってきました。しかも台風の中。

─好きですねえ(笑)。
でも、楽器を吹くのと共通する部分があって面白いですよ。真っ直ぐ音を伸ばすときには真っ直ぐ走っているシーンと同じイメージですし、フレーズを歌うときにはコーナーに入ってアクセルを開けていくのと一緒です。クレッシェンドして行かないとフレーズを吹ききれない感じが。
あと、雨の中バイクに乗っているとつらいじゃないですか。でも10分経つと忘れてるんですね。あと冬は寒いし、夏は暑いし。これも嫌な曲を吹いているのと一緒です。現状を受け入れなさい、ということでね。

─お休みの日によくすることはありますか。
釣りでしょうか。こちらは初心者ですが。

─お酒とか飲まれますか。
以前は飲まなかったのですが、最近飲むようになってきました。大フィルのおかげですよ(笑)。本番の緊張感の後でからだをほぐしたくて、大フィルに入って3年目くらいから飲むようになりました。

当コーナーの情報はそれぞれ掲載時のものです。
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